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山梨学院―岡山学芸館 七回裏岡山学芸館2死、中飛を放つ代打・国近泰獅選手。捕手横山=伊藤進之介撮影

(16日、第107回全国高校野球選手権3回戦 岡山学芸館0―14山梨学院)

 「思い切っていけ!」

 甲子園に野太く低い声が響き渡る。代打の後、八回から一塁の守備についた国近泰獅主将(3年)。マウンドには、この夏初登板の板谷航太郎投手(2年)。強打の山梨学院打線に捕まる中、必死に声をかけ続ける。「後輩ピッチャーを孤立させてはいけない」

 自分自身、夏の出場は岡山大会3回戦以来。岡山大会も甲子園初戦も三塁コーチに徹していた。

 とにかく、けがに泣いた。1年の3月、右肩を脱臼し手術。半年プレーできなかった。今年3月にはイレギュラーした球が左目に当たり手術。リハビリに1カ月かかり、プレーできない期間が続いた。

 仲間が実戦で経験を積み重ねる中、108人いる部員をどうまとめるか、情報収集に努めた。ラグビーの強豪ニュージーランド代表「オールブラックス」のチーム論や、元プロ野球選手、監督の本。和気町から岡山市の学校まで片道50分の列車通学時間を読書にあてた。

 「信頼を得るには行動で範を示す必要がある」。信じ、率先して声を出し、動いた。「私生活に至るまで取り組む姿勢を見直し、ここぞという勝負の場面で自信を持って臨めるようになった」。

 その背中を見てきた藤原颯大選手(2年)は「自分や他の人が打席に立った時、ずっと声をかけ続けてくれた。『まだまだここから』という声かけは最後までみんなに勇気を与えたと思う」と感謝する。

 国近主将は「108人を同じ方向に向かせるのにしんどい時期もあったが、全員で最後まで戦えました」。

 大学では学生コーチになり、指導者への道に進む。

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